税理士を生業としていると、相続に関する色んなご相談を受けます。一番多い相談が、「相続税の節税を教えてください。」というもの。
でも、ちょっと待って!
相続対策でまずやらなければならないことは、相続財産の洗い出しと相続税の試算です。
財産の洗い出しと相続税の試算が出来ていないのに、いきなり節税のお話はできません。
相続財産の洗い出し
「相続税がいくらくらいかかるか試算なさったことはありますか?」
このように尋ねると、多くの方が、「保険会社が教えてくれた」「銀行が試算してくれた」とお答えになります。
中には、「税理士に試算してもらったから大丈夫」とおっしゃる方も。
だけど実際は、相続財産の洗い出しが不十分で、分割案もグラついていて、相続税額がホントのところいくらかかるか分からないというケースに多くぶち当たります。
残念なパターン
相続財産の洗い出しが不十分
遺産分割案が現実的でない
実際には使えない特例を適用できると勘違いしている
1.相続財産の洗い出しが不十分
特に多いのが、土地の評価を適正に行っていないというケースです。
不動産は評価が命です。評価方法によって大きく価額が異なります。
「ざっくり計算できればいい。路線価で概算金額を出して。」と言われても、実際には区画整理区域内にあり、個別評価が必要ということもあります。
実際にあった事例では、個別評価について税務署に確認を行ったところ、ご本人の想定の20倍の価額だったということもあります。
2.遺産分割案が現実的でない
遺留分を無視した分割案や、特定の相続人にだけ極端に多く相続させる分割案では、相続時に揉めることが想定されます。
逆に、「みんなで平等に」という場合も、相続財産が不動産が主な場合は、相続時に平等に分けることが出来ずに揉めたり、納税資金不足に陥ったりします。
3.実際には使えない特例を適用できると勘違いしている
小規模宅地等の特例が使えると思っていたのに使えない、農地の納税猶予が受けられると思っていたのに受けられない、などというケースがあります。
特例が受けられないと、想定以上に相続税がかかり、納税資金の手当てが出来ないという事態になります。
相続税額を試算しよう
そもそも、相続税がかからない、あるいは、相続税がかかったとしても少額である場合には節税する必要がありません。
相続税がいくらくらいかかるかを知っておくことはとても重要です。
そして、その相続税は、一次相続だけでなく、二次相続も念頭においたものであることが必要です。
※一次相続とは1度目の相続、二次相続とは2度目の相続のこと。
先日、A様から弊事務所に相続シミュレーションのご相談がありました。
一次相続・・・90歳代の親御様から長男A様への相続
二次相続・・・長男A様から配偶者B様への相続
三次相続・・・配偶者B様から長女C様(30代)への相続
A様のご要望としては、「年齢順に亡くなった場合の相続税額が知りたい。」、「もし、一次相続でA様ではなく孫のC様に相続したらどうなるか。」の2点を知りたいということでした。
弊事務所で作成したのはこのようなマトリックス表です。
3パターンについて、それぞれ三次相続までシミュレーションしています。
金額はお見せすることはできませんが、驚きの結果になりました。
節税は必要か
シミュレーションした結果、法定相続どおり相続すると、一次相続では最も税額が安かったのですが、三次相続では総額5,000万円以上の税額になってしまうことが判明しました。
一方、一次相続でC様が相続するパターンでは、一次~三次相続までの税額総額が200万円程度ということが分かりました。
こうなると、「税金を抑えるために保険に入った方がいいですよ~。」とか、「マンション経営は節税できますよ~。」といった業者の節税トークに乗っかる必要は全くありません。
悪徳税理士が良く使う手の、「会社組織にした方が節税になります。」というのも不要なことが分かりますよね。
結果、A様は税額が一番高くなる法定相続パターンを選択することをお決めになりました。
その代わり、ご自分たち夫婦の今の生活と老後を充実させるためにお金を使い、C様への相続財産を減らすことにしました。
世の中には、節税商品を売りつけるビジネスが数多く存在します。
確かに、それらを利用することで恩恵を受ける方も多くいらっしゃるとは思いますが、A様のように違う選択をなさる人生もあっていいと思います。
相続対策とは(まとめ)
相続対策 =(イコール) 節税 ではないと私は思います。
節税をし過ぎてキャッシュが手元に無くなるですとか、財産を残すことに囚われすぎて自分の人生が貧しいものになってしまうようでは本末転倒です。
相続対策は、これから自分がどんな生き方をしていくのか、誰に何を残して、その人にどんな人生を歩んで欲しいのかを考えることだと思います。
現状を知るために必要なのが、相続財産の洗い出しと相続税の試算です。
相続シミュレーションは1度やってみる価値があると私は思います。
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